2005年11月 8日 (火)

大家さん殺人事件2

 カーテンを開けると、山本さんの裏庭が見える。柿の木が一本、その下に丹精した盆栽や菊の鉢植えなどがある。 
 今日は下を見ると、見知らぬ男たちがうろうろしていた。視線を少しとばすと、パトカーが山本邸の前に止まっているのも見えた。私は、プレステ2で信長の野望をやっているボーイフレンドに声をかけた。
「北島、北島、何か変だよ。大家さんのうち」
 ボーイフレンド、北島はコントローラーを下に置くと、私の隣に座って、窓から下を見た。
「泥棒にでも入られたんじゃない?」
「そうかな、結構たくさんおまわりさんたちがいるよ」
 私と北島は私服の刑事さんや、写真を撮っている鑑識の人たちを上から見物した。
「スゲーな」
 北島の感想は、たいていスゲーな、だった。この場合の私の感想は、興味深い、だけど興味深いね、なんて言っても、そういう日本語は北島には伝わらないので、一緒に「すごいね」と言いながら下を見ていた。
 裏庭にいる刑事さんの一人が上を向いて、私たちと目があった。青灰色の背広を着ている。
「どうしたんですか?」
 目があった照れくささから、思わず下に向かって声を上げた。

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2005年11月 9日 (水)

大家さん殺人事件3

 さわやかな笑顔。私はいっぺんでキューンとなってしまった。どこがって、喉の奥のずっと深いところが、急に上ってきたみたい。でも吐きそうって感じじゃなくて、悲しいのと似た感じ。刑事さんでいい男で、好青年を絵で描いたような。私の周りにはいないタイプだ。
 思わず手を振ってしまったら、その人も振り替えしてくれた。
 北島がおいおいと、背中をこづく。煩いな、と体をひねっていたら、さわやか刑事さんの後ろに立っていた、後頭部の毛の薄い刑事さんが、さわやか刑事さんの肩をぽんぽん叩いてこちらを指さした。
「真木野、なにしてんだよ。おまわりと仲良くなる気か?」
「五月蠅いな、北島、帰りなよ。私がどうしようと私の勝手だろ」
「真木野が飢えて死んでないか心配できてやってるんだよ。ちゃんと食料も差し入れてるだろ」
「北島が勝手にやってることだろ?」
「俺の他には、心配してくれるヤツなんていねーだろー」
「もう、いいからさ、帰っていいよ、帰りなよ」
 ぐちゃぐちゃと北島と言い合いをしていると、玄関のドアがどんどん揺れた。
「真木野さん、真木野さん?」
 ひえ、あの刑事さんの声だ。さわやか刑事さんだ。声までさわやかだ。私は北島をふりほどいて、玄関に駆け寄ってドアをばんと開けた。

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2005年11月10日 (木)

大家さん殺人事件4

 さわやかで、感じの良い声なのは後頭部の薄い刑事さんの方だった。それで、笑いそうになったのは、その刑事さんの名前が臼井だったことだ。肝心のさわやかな笑顔の刑事さんは小針さんだった。ちょっと高くてひび割れたような声、私はがっかりしてしまった。声は重要なんだ、声は。
「真木野さんは君?」
 小針さんが訊く。私は黙って首を縦に振った。その後は、主に臼井さんが訊いて、小針さんがメモをとっていた。
「えー、もう一人の人は」
「あ、北島です」
 北島がいつの間にか、私の後ろに来ていた。
「北島さんね、一緒に住んでるの? それとも今日はたまたま遊びに来たのかな?」
「たまたま、のほうです」
 北島がのんびり答えた。
「今日、遊びに来たんですか?」
「昨日の夜、ですね」
「夜、何時頃ですか?」
 私は我慢できなくて、臼井さんに訊いた。
「ちょっと何があったんですか? 泥棒? 強盗?」
 臼井さんと小針さんはちょっと目を合わせるとうなずきあった。
「実は、裏の家の方が殺害されましてね」
「え、大家さんが殺されちゃったんだ。何処で? 誰に?」

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2005年11月11日 (金)

大家さん殺人事件5

「ああ、そういえば、こちらのアパートの持ち主でしたっけね。いい身分ですよね、他にもあちらこちらに不動産を持っているんですから。なにしろ、お祖父さんの代からの地主だっていうじゃありませんか。相続税を払っても、まだまだ土地は残ってるそうですね」
「すみません、私、一月前に引っ越してきたばかりで、この辺のことに詳しくないんです」
「そうなんですか、こりゃ余計なこと言っちゃったな」
 臼井さんは笑いながら自分のおでこをぺしっと叩いた。
「そういうわけで、被害者はこれといって仕事があるわけでもなく、一日中ぶらぶらしていたようです。真木野さん、真木野さんの部屋の窓からは隣のお宅がよく見えると思うのですけどね」
「え、私だって、そんなに暇じゃないですから隣のうちなんかずっと眺めている分けじゃないですよ」
「それはもちろん分かっていますけど、何か不振な物音がしたとか、見かけない人が裏庭に立っていたとか。全然重要だと思わないような、些細なことでもいいんですよ。被害者を何時頃見かけたと、いったことでも」
 私は、うーんと考え込んでしまった。正直に言って、大家さんの家を気にして、窓から外を眺めたことなんかない。五十代ぐらいの年輩の小太りした大家さんが盆栽や庭の植木の世話をしていたり、多分奥さんが、こっちは四十そこそこ、布団を干しているのを見るくらいだ。
 小針さんが私の口元を見つめている。片手にペンを握って。
 ああ、近くで見ても、やっぱりいい男だな、この人の役に、何とかしてたって上げたい。黙ってしまった私に、臼井さんが頼みますよ、というように首を少し前に落とした。

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2005年11月12日 (土)

大家さん殺人事件6

「ところで、ご職業、伺っていなかったですよね」
 臼井さんが黙ってしまった私に声をかけた。
「そうですよ、先輩」
 小針さんが小声で、フルネームもまだじゃないですか、と付け加えた。
 表札も郵便受けも、姓しか書かなかったから知らなくて当然だ。この頃はいろんな犯罪があるから、最低限の情報しか表に出さないようにしている。町中でやっているアンケートなどにも一切関わらないようにしている。美容院のカードにも名前だけしか、書かないようにしているくらいだ。
「私、売れてなくて恥ずかしいんですけど、舞台で芝居をしています。真木野凛です。こっちは北島悟、同じ劇団の仲間です」
 北島は。どうも、と頭をぺこりと下げた。
「じゃあ、お仕事の時間は」
 臼井さんは恐縮ですと、言った後にまた質問をやりだした。
「不規則、ですね。本当に私の場合は。もちろん役者だけじゃ食べていけないから、アルバイトはしますよ。でもそれも昼間の仕事、というわけじゃないですから」
 臼井さんは視線を下に落として、眉毛を寄せた。
「年はおいくつですか? 親御さんは、こういうこと知っているんですか?」
 小針さんが、困ったような顔をした。
「すみませんね、真木野さん。ちょっとあなたの、その、服装がですね、薄着なものですから。その」
 私は自分の格好が冬にしては露出度が高いことに思い及んだ。きっと臼井さんも小針さんも目のやり場に困っているに違いない。
「二十五です。因みに親には秘密です。捜索願とか出されてる分けじゃないから、親に連絡するとか、そういうのはなしにしてくださいよ」
「それはもちろん私たちの出る幕でも何でもないことですから。ただ、親御さんに、心配をかけなければいいんですよ。まだ若いんだから、やりたいことをやればいいと思いますよ」

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2005年11月15日 (火)

大家さん殺人事件7

「すみません、それで昨日のことなんですけど」
 小針さんのひび割れた声が中に割って入った。やはり声は臼井さんの方が気持ちいいな、と思いながら、今度は真剣に考えた。
「昨日、昨日。あ、北島、あんた昨日何時頃うちに来た?」
 北島は急に自分に振られて、へ、という顔をしたがすぐに考える目つきになった。
「北島が来るちょっと前、十分か五分か、とにかくそれぐらいに大家さん、見たよ。縁側に座って奥さん、多分奥さんだと思うけど、話してた。奥さんは洗濯物を取り込んでいたよ」
 北島は、自分がにわかに重要な証言を迫られていることに、緊張して目と目の間にぐっとしわを寄せた。
「三時半に連ドラが終わって、それからシャワーを浴びてヒゲそって、多分、出たのが四時過ぎ。ココまで普通に自転車で二十分。四時半ぐらいには、真木野の部屋についていた、と思うな」
 臼井さんと小針さんが緊張して頬を引き締めたのが分かった。
「じゃあ、四時二十分くらい? 真木野さん、それぐらいに大家さんと奥さんの姿を見たんですね?」
 臼井さんが勢い込んで訊いてきた。
「そう。そう。それぐらい」
 私は胸を張った。重要証言かもしれない。そう思うと、鼻の穴がふくらんできた。
「その他に何かありませんか? 悲鳴とか、怪しい人影とか」
「うーん、何も気がつきませんでした」
「ありがとうございました。また何か聞くこともあると思いますけど、すみません、お願いします」
 その後、少し、さいわい荘の他の住民のことなんか訊かれた。でもほとんど隣の人のことも下の人のことも知らないので、満足に答えられなかったのが残念だ。
 臼井さんも小針さんもとても丁寧に、お礼を言って帰っていった。

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2005年11月18日 (金)

大家さん殺人事件8

 もっと、何か衝撃的な話が聞けたら良かったんだけど。
 小針さんと臼井さんが帰った後に、そう思った。二人とも助かりました、ありがとうございました、って帰っていったけど、私は少し物足りなかった。ほとんど事件については教えてもらえなかったからだ。
 臼井さんが、何か思い出したことがあったら、連絡してください、と名刺をくれた。あれ以上はもう思い出しようがないけど、きっと同じことを何回もくどくど訊かれるんだろうな、と思った。友達の家に泥棒が入って、たまたまその日に遊びに来ていたというだけで、異常に長く質問され、指紋まで採られた時のことを思い出した。あれは本当に人権侵害だった。
「北島、いったい、凶器はなんだと思う? いつ、どの部屋で殺されたんだろう?」
 北島はぱちぱち瞬きしてから、ようやく目が覚めたみたいにクビをぐるーりと回した。ラジオ体操第二で最後の方でやるような動きだ、ってわかんないか。北島は、とにかく結構緊張していたみたいだ。彼は、今までの中途半端な人生で、刑事さんに何か訊かれることってなかっただろうから。
「さあ。でも強盗かな。怖いよな。ここでそういうことが起こるってことがさ。裏の家なんだぜ。さいわい荘に押し込まれてもおかしくないじゃないか?」
「裏の家は、古いけど、広くていかにもお金持ちそうな家じゃない。ここはおんぼろアパート、強盗も入る家、選ぶよ」
 北島と話しているうちに、なんだか玄関の外が騒がしくなってきた。わいわいするような騒がしさじゃなくて、小さな波が浜辺に押し寄せるように小さな声が重なっているようだ。私達は、刑事さん達が帰っていったドアを外に向かって押し開けた。

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2005年11月21日 (月)

大家さん殺人事件9

 二階の廊下にはおばさんが二人と、禿頭のおじいさんが一人、不安そうなそれでいてちょっと興奮して妙に活気づいた表情でひそひそ話をしていた。時折おじいさんの声が大きくなるのは、少し自身が耳が遠いからであろうか。
 私達が出てくると、おばさん達はぎょっとしたようにこっちを振り返った。おじいさんは初めからこっちに向いていたので眉をひそめて大声を上げた。
「なんだ、今時の若い者は、アメリカかぶれも大概にせんといかんぞ」
 私がむすっとして、黙っていると、北島が「すみませんね、こいつ。なりはこんなだけど見かけよりはずっとまじめなんです」と如才なくにっこり笑った。
 おばさん達は、北島を見て安心したように微笑んだ。北島は昔の時代劇俳優のように太い眉、りりしい目元口元の、いわば暑苦しい顔をしているのだが、この顔が五十歳以上のおばさんにはえらく受けがいい。私が口をとがらせてふくれっ面をしていると、北島はおばさん達の中に割って入って、気さくに話し始めた。さっきの刑事さん達を前にしたときとえらい変わりようだ。北島は、自分がおばさんキラーなのを百も承知しているのだ。
「ええ、そうよ。刑事が来たわ。ちょっといい男だったわね」
「事件のこと? ああ、聞いたわよ。自分だけしゃべらされるなんて嫌だもの」
「大家さんが殺されたんですってね、お気の毒だわ。お風呂の中に顔を突っ込まれていたそうよ。水死って言うのかしらね、そういうのでも」
 二人のおばさんはおすぎとピーこのように、二人で一斉に話し始めた。二人のおばさんはどう好意的に見ても、色恋には縁がなさそうに見えるのに、それでも北島には流し目を使ったり、声を高く上げて、媚態を示す。
 全く、いい年して。
 私は鼻白んだが、事件のことを聞けるので、渋々と北島の後ろから顔をのぞかせていた。
 二人のおばさんは201号室と、202号室に住んでいるそうだ。そう言えばゴミ出しの時にたまにすれ違う。生活時間が違うのとあまり興味がないので、目に入っていても認識としては見ていないのと同じくらいのものだろう。痩せて色黒の方が前川さん、201号室で一人暮らしだ。202号室の太ったおばさんの方は、桜庭さんといって、高血圧で糖尿気味の連れ合いと年金生活。禿頭のおじいさんは一人で102号室に住んでいる。瀬川さんだ。
 いくら引っ越してきたのが一ヶ月前、とはいえ自分が同じアパートの住人の名前や顔さえ、しかと知らなかったというのは、無関心にもほどがあろうか。しかし、さっきのおじいさんのように顔をしかめて、私をじろじろと観察したり、妙にいやらしい目線で、眺められたりすることが多いので、自然と常識あるいわゆる大人を、こっちから敬遠するようになっていたのだ。もっと露出の少ない服を着て、おとなしめにすれば、もっとこの世は生きやすい、受け入れられやすいのは知っているが、これはいわば、私のポリシー。たるんだお腹を見せている分けじゃなく、毎日、百回の腹筋でへこましたお腹や、きれいな若い肩や首筋、胸元など、美しいものを見せて、何処が悪いのよ、と思う。どんなに食事だってストイックに我慢しているか。要は、だらだら普通に暮らしているんじゃなく、努力の成果なんだから、ちょっとぐらい大胆な格好をしていたっていいと思うんだ。変な目で見られることがあっても、気にしない。かえって見られないことの方が物足りないし、なんだか不安なのは、私が人に見られる仕事をしているからなのかな。

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2005年11月23日 (水)

大家さん殺人事件10

「風呂場で殺された、となると強盗じゃなさそうですよね」
 北島が前川さんと桜庭さんに訊いていた。
「そんな物、あの女がやったに決まってるだろうが」
 急に瀬川のおじいさんが大きな声を上げた。
「あの、女っていったらあの女だよ。財産目当てに転がり込んだ、あの四十年増の女だよ」
「え、結婚されているんじゃないんですか? あの大家さんのうちにいる女の人ですよね」
 私は、ちょっと驚いた。大家さんの奥さんだと思いこんでいたのだ。
「じゃ、同棲されているんですね」
「あの女との結婚じゃ、問題が多くてな、親類縁者が赦さんだろうが」
「瀬川さん、あの人だって決めつけたらいけませんよ」
 前川さんだ。
「そうですよ、まだ誰がやったか、分からないんですからね」
 桜庭さんも瀬川さんをたしなめた。
「お前サンたちだって、あの女があやしいって、思っているだろうが。何しろ身持ちが悪すぎる、男と見れば、誰彼かまわず、粉かけよる」
「浮気の現場を見られたんじゃないかしら、って私も思うのよね」
 前川さんが、おお、恐ろしい、という顔をした。
「あらあら、前川さんまで」
 桜庭さんが口に手を当て、北島の方に目を流す。私はおばさんの香水の匂いに気持ちが悪くなってきた。
「夕方近くまでは、何事もなかったみたいですけどね」
 私が言った。
「じゃあ、奥さんじゃないのかもしれないわよ。うちのダンナがね、糖尿で、お酒は禁止されてるんだけど、カラオケ好きでね。近くのスナック、ほら寄り道、とかいう。そこで、五時ちょっと過ぎくらいに着いたら、あの女の人が、もうすっかりできあがって天城越えを歌っていて、ママが言うにはもう3曲目よって。七時くらいにはうちのダンナは帰ったんだけど、あの人は若い男にしなだれかかるようにして、店を出て行ったっていうから、ダンナはもしかしたら、ホテルにでも行ったんじゃないかって。そうだとしたら、あの人には出来ないわよね」
 桜庭さんはそこまで一気にしゃべった。

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2006年2月20日 (月)

大家さん殺人事件11

「その寄り道っていうスナックは大家さんの家から、どれくらいのところにあるんですか?」
 私が訊くと、瀬川のおじいちゃんがちょっと考える目つきになった。
「自転車で急いでも10分はかかるの」
「タクシーで行くところじゃないわね、あの辺は一方通行が多くて、かえって時間がかかったりするから」
 前川さんが横から口を出した。
「じゃあ、やっぱり彼女じゃないですよ」
 私は断定した。
「4時20分頃、私は窓から大家さんと奥さん、両方の姿を見ているんですよ。奥さんは洗濯物を干していた。その直後に、大家さんが風呂場で殺されたとして、10分から15分くらいはかかりますよね。それから、怪しまれない程度の身繕いをして大急ぎでスナックに自転車で駆け込んだとして、15分から20分。すごい早さでこれだけのことをしたとして、4時45分から5時くらいまでの間に、すっかり出来上がって自然に2,3曲歌えますかね? 不自然すぎますよ」
「まてよ、真木野」
 北島が言った。
「15分位じゃ、殺せないぜ。洗濯物を干していたんだろ? そして大家さんもその近くでくつろいでいた。その状態からどうやって風呂場に移動するんだ? 力ずくで風呂場に運んで行けないよな。ということは、お風呂が沸いているから入ったらどう? なんて言って誘導するわけだろうけど、被害者が自ら大急ぎで、風呂場に飛び込む、なんて考えられないわけだよ」
「ということは、奥さんは4時20分に私が目撃してからすぐにスナックに行った、それが自然ですよね」
 一同、私と北島の言うことがもっともだと思ったらしく、大家さんが殺されたのは、奥さんがスナックに行っている間だろう、という話になった。

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